キアリ奇形と脊髄空洞症についてわかりやすく紹介します。
こんなことが書いてあります。
- 脊髄空洞症はどんな病気なのか?
- どんな検査をするのか?
- 発症から手術までの実体験を紹介
脊髄空洞症はどんな病気?
脊髄空洞症(Syringomyelia)は、何らかの原因で脊髄に空洞を形成する慢性の進行性の疾患です。
最近では、「AKB48」の柏木由紀さんが発症し、手術を受けたことで話題になりました。
じつは、僕も15年以上前に発症し、手術をしました。
まだまだ、めずらしい病気ですので情報発信と自分自身の記録を残すために記事にしました。
日本での脊髄空洞症患者は約3,000人
患者数は正確には把握されていません。2008年に1年かけて行われた全国の疫学調査では推定2500人程度と推定されていますが、実際はそれよりもかなり多いとされています。
外来受診患者に対する割合は0.3~0.4%程度と言われています。
原因はキアリ奇形に伴うものは半数、脊髄腫瘍、外傷による脊髄損傷に伴うものがそれぞれ10%程度割、脊髄くも膜炎に伴うものが6%程度とされています。
男女比はほぼ同じで、発症年齢は6~15歳の小児期と30~40歳の成人期の2層にピークがあるとされています。
キアリ奇形と脊髄空洞症
キアリ奇形とは、小脳の一部が大後頭孔を通して、脊柱管内に落ち込む病気です。「奇形」とありますが、生まれつき(先天性)という意味です)。
頭蓋骨のラインより5mm以上下がっていると、キアリ奇形と診断されます。
このキアリ奇形によって脳脊髄液の流れが妨げられて、脊髄空洞症が発症することがあります。
脊髄腫瘍など他の疾患を伴なわないもをキアリⅠ型、伴うのもをキアリⅡ型と言います。
脊髄腫瘍・脊髄損傷に伴うもの
交通事故による外傷や脊髄にできた腫瘍の影響で、脊髄空洞症を発症する場合があります。
キアリ奇形がない脊髄空洞症が発見された場合、造影検査を行い腫瘍性の可能性を除外することあります。
脊髄空洞症の症状と原因
症状は神経的な異常がほとんど
脊髄に空洞ができるとそこに脊髄液がたまりはじめます。神経の束である脊髄の中に空洞ができると、神経を圧迫するため神経を刺激します。
この空洞が脊髄のどこにできるかで、症状も変わってきます。
頚髄や胸髄にできれば、上肢のしびれが出てきます。進行すると腕や手がしびれて感覚がなくなります。温痛覚障害も起こるため痛みや熱さ、冷たさが分かりません。その他に、回転性のめまいや下肢のしびれ、痛みもでることがあります。
症状の経過は比較的ゆっくりだけど、確実に進んでいく・・・
自然に治ることはまれです。ゆっくりですが確実に進行していきます。脊髄内の空洞は次第に大きくなり、脊髄の神経を圧迫していきます。
痺れなどの症状が強くなってくると重篤な状態になることもあり、車椅子生活を強いられてしまうこともあります。
脊髄空洞症の発見に役立つ検査:MRI
脊髄空洞症は、非常にまれな病気です。専門の医師でないと、画像検査なしではこの疾患の可能性を疑うことは難しいとされています。(痺れやめまいなどは様々な疾患で出る症状だからです。)
しかし、今はMRIがあればすぐにわかります。
大学病院または総合病院の脳神経外科を紹介してもらいましょう。
脊髄空洞症はMRIでわかる!
ひと昔前は、脊髄空洞症は発見が難しい病気でした。気づかずに一生を過ごした人も多いとされています。
しかしMRIの登場で、簡単に分かる病気になりました。実際、症状がでる前に脊髄空洞症と診断される人の多くが、交通事故や腰痛、首の痛みなど別の病気の検査でMRIを撮った時に見つかっています。
最近では、軽い腰痛や首の痛みでもMRIをとることが多いため、発見率も増えています。
までに、脊髄腫瘍が原因となることもあるため、必要に応じて造影MRI検査も行われます。
脊髄空洞症と診断されると定期的に脳及び脊髄のMRI検査を受けて経過観察することになります。
脊髄空洞症の治療法
脊髄空洞症の原因はいくつかあるので、治療法はそれによって違います。
もっとも多い原因がキアリ奇形
キアリ奇形は、脳の一部である小脳と呼ばれる部分が正常な場所より少し下がっている(下垂)している先天性の奇形です。奇形といっても小脳自体の機能は正常です。位置が少し違うだけです。
白い矢印が小脳の下の部分です。すぽんとはまっているのが分かると思います。
本来は小脳の前側に部分(赤矢印)に脳脊髄液の流れ(白く写っているのが脊髄液)がなければいけませんが、位置が低いためふさがれています。このため脊髄の流れる行き場所がなくなり、脊髄の中心管に流れ込んでしまうと考えられています(正確にはわかっていません)。
キアリ奇形が原因のときは、この小脳の位置を動かしてあげる手術をします。大後頭孔(だいこうとうこう)減圧術が一般的です。
この画像はCTで撮ったものです(私自身の画像です)頚椎の2番を切って、大後頭孔を広げて減圧しています。それによって小脳がちょこと浮いた状態になり正常の位置に戻るというわけです。
この2枚の写真はMRIの特殊な撮影法(PC₋CINE法)で脳脊髄液の流れを見たものです。白く見えるところは脳脊髄液の流れがあるところです。
上が手術前で下が手術後です。小脳の後ろ側に白い筋が出ているのがわかります。わずかですがこのスペースのおかげで減圧されています。これで効果がないとシャント術が行われます。
脊髄空洞症は治る?
MRIの登場で、脊髄空洞症は早期発見できるようになりました。
しかしながら、完全な治療法はまだ確立されていません。大後頭孔減圧術やシャント術によって、症状を軽くする、もしくは進行を遅くするしかありません。
でも、症状が軽ければそのまま一生過ごすことも可能なようです。
私も脊髄空洞症と診断されて、大後頭孔減圧術をしました。最後にその体験記を紹介します。
脊髄空洞症に気付いてから手術をするまで
自分が脊髄空洞症だとに気づいたのは手術の8ヶ月くらい前でした。たまたま別の目的でMRIをとる機会があり、その時にわかりました。 もちろん症状はありませんでした。
とても驚きました。医師に「しびれが無いのが不思議、立っていられるのが不思議」と言われました。キアリ奇形が疑われましたが、念のため造影検査もして脊髄腫瘍が無いことを確認しました。
その時は症状が無かったのと、手術を決心できなかったので経過観察していました。しかし、それから半年後に突然回転性のめまいや手の痺れや温痛覚障害がでて、足の裏もしびれるようになりました。
ついに手術をすることに・・・
そしてついに手術をしました。大後頭孔減圧術です。
いざやるとなると、開き直ってしまいあまり怖いとは思いませんでした。脳外科の先生に聞くとそんなに難しい手術では無いらしいです。
頭蓋骨をはずしたり脳を直接いじるわけではないので脳外科的には簡単な部類なのかもしれません。
でも全身麻酔だし、不安はあったのは確かです。
でも一番いやだったのは尿道にフォーレをいれることでした・・・(笑)
手術は約2時間。減圧後はエコーで小脳の位置を確認して終わりました。首の筋肉を一部切ったためその痛みに2,3日苦しみましたが術後5日で退院し、実家に新幹線で帰りました。
でも、本当に大変だったのは、術後1カ月以上苦しんだ口内炎(舌炎)です。手術で免疫が落ちたのか、下の先にできた舌炎が本当に痛くて治らなくてとても苦しみました・・・。
口腔内は清潔にしておきましょう。
手術後の経過(現在)
現在は定期的にMRIを撮っていますが、脊髄の空洞の大きさはあまり変わっていません。
でも大きくはなっていないし、症状もありません。
脊髄空洞症の手術の目的は空洞を小さくすることではなく、症状をなくすことが目的なので一応は順調のようです。
縮小していないのに、症状が消えたことに関しては疑問もありますが、偶然とはいえ早く見つかって早く治療できたことは運が良かったと思います。
同じ脊髄空洞症で苦しんでいる方、悩んでいる方が一日も早く良くなることを願っています。
もしかしてキアリ奇形??いきむと後頭部が痛くなる人へ
後から分かったことですが、実は脊髄空洞症に関連する症状が小さい頃から出ていたことがわかりました。
それは後頭部痛です。いつ痛くなったかというと、トイレで〇ンチをしするときです。
小さい頃から不思議に思っていました。〇ンチをしようといきんでいると、そのあと後頭部が締め付けられるように痛くなっていました。
気を失うことはありませんでしたが、かなりの痛みでした。その他にたくさん笑った時、風船を膨らました時、腹筋をした時などに後頭部が痛くなっていました。
つまりおなかに力をいれて腹圧をかけたときです。実はこれキアリ奇形に特有の症状だそうです。
もし同じように後頭部が痛くなる方、原因不明の手足のしびれがある方は一度検査することをおすすめします。
今回は、脊髄空洞症について自分に体験も含めて紹介しました。みなさんの参考になれば幸いです。
突然失礼します。
キアリ1型奇形脊髄空洞症とのこと。
よく理解できず数日が経ちます。あれこれネットで調べ、日に日に不安が募りここにたどり着きました。
早期発見早期治療とも書かれている情報のなか、地方の為、専門の医師がいるのか、都会の大きな病院に行くべきか、どちらの治療が先か仕事は辞めなくてはならないのかなど悩む毎日です。
大きな病気はしたことなく、何からしたらよいのかもわかりません。
どうかアドバイスがあれば教えていただけないでしょうか。
ようこ様
ご質問に気付かずに1カ月近く経ってしまいました。申し訳ありませんでした。ようこ様もキアリ1型奇形脊髄空洞症とのことですが、診断がでているのであればすでに病院を受診されて検査もおこなわれたのでしょうか?
そうであれば、まずは主治医の先生のご意向をお聞きになってはどうでしょうか?腫瘍など併発がなく、症状もなければ、経過観察することも多いようです。私の場合は、たまたま職場が医療機関だったこともあり、すぐに相談できる環境にありました。
それでも最初は経過観察していました。 この病気は手術の難易度は高くないようですが、まれな症例なため手術自体を経験したことのない医師も多いと聞きました。そういう意味では、症例数の多い専門の病院も探されるのも良いかと思います。大学病院レベルであれば大丈夫だと思いますが・・。お仕事は辞める必要はないと思います。私は術後1週間で新幹線で実家に帰りましたし、手術から3週間後には働いていました。私も医師ではないので、詳しいアドバイスはできませんがご質問があればまたご連絡ください。
ご丁寧にお返事いただいて本当にありがとうございます。
身体の変化に落ち込む日々で、直接お聞きしたいことがある場合、連絡方法はありますか?