骨は人体で一番固い組織です。毎日新しく生まれ変わりながら、体の重さを支えています。
しかし、高齢になったり、病気の治療によって骨の密度が低下することがあります。
悪化すると「骨粗鬆症」となり、骨がもろくなり骨折しやすくなります。
特に高齢者の骨折は寝たきりにつながるため注意が必要です。
自分の骨の状態を知っておくことは、健康に暮らしていくためにも重要です。
今回は、病院で行う骨密度(骨塩)検査について、わかりやすく解説します。
骨塩定量
骨の健康度合いは骨塩の「密度」で表します
骨の強さを表す指標として「骨密度」という言葉がよく使われます。読んで字のごとく、骨の密度を表しています。
つまり骨の成分であるカルシウム、マグネシウムなどのミネラルがどれくらい含まれているかを表しています。
塩の主成分のマグネシウム、ミネラルの量をあらわすため、骨塩定量検査とも言われます。
骨密度検査の種類と仕組みを紹介
最近は、検診などでも骨の密度をはかる検査が行われるようになりました。
骨の密度を測るには、専用の装置が必要ですが、いくつかの方法があります。
クリニックなどで行われる簡易検査
クリニックなどでは、超音波を使った方法とレントゲン写真を使った方法が使われます。
超音波を使った方法
足や肘など骨の一部に超音波を当てて行う方法です。
超音波は骨の密度が高いと早く伝わり、密度が低いとゆっくり伝わります。
この違いから骨の密度を算出します。
大きな装置がいらないので安価に検査できること、放射線を使わないので妊婦さんでも安心して検査することができます。
骨の密度は、超音波の伝わりやすさを数値化したものが使われます。
簡便ですが、誤差も大きく診断ガイドラインでは推奨されていません。
レントゲン写真を使った方法
X線写真(レントゲン写真)を使った方法は「MD(Micro densitometry)法」やDIP法と呼ばれます。
レントゲンフィルムの上に手を広げ、両手の間にアルミステップを置きます。
アルミステップも一緒に撮影します。アルミステップは事前にX線の透過率がわかっているため、濃度を比べることで、骨の密度を算出できます。
レントゲンを取る装置とアルミステップがあればできる検査です。ただし、被ばくがあること、手に限定されるなどの問題点もあります。
超音波法より正確で診断ガイドラインでも推奨されています。
総合病院などで行われる詳しい骨密度検査:DEXA法
DEXA(デキサ)法は、2種類の細いビーム状の放射線を使った検査です。
大型の専用装置が必要になります。装置に横になって、腰椎、大腿骨頭、手首、全身骨などの撮影を行います。(骨折のリスクの高い腰椎や股関節(大腿骨頭)などが対象になります。)
DEXA法では、骨の密度によるX線の透過率が違いを利用します。また、エネルギーの違う2種類のX線を使うことで、骨と軟部組織(筋肉や脂肪)を分離して測定が可能です。
そのため、骨の体積(g)と単位面積(cm2)を算出できるため、数値としての骨密度(g/cm2)を出すことができます。
DEXA法は、もっとも正確に骨の密度がわかり、再現性も優れた方法です。診断ガイドラインでも推奨されています。>>> 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015
DEXA法は高価で大きな装置が必要なため、比較的大きな病院や一部の整形外科にしか設置されていません。また被ばくがあるため、妊婦には使用できません。
経過観察が必要な人、精密検査が必要な人を対象に行われます。
骨密度検査にかかる費用
骨密度検査は、健康保険が使えます。
料金の目安となる診療報酬の点数は、超音波法が80点(800円)、MD法は140点(1400円)、DEXA法は450点(4500円)になります。
保険が使えるのでこの1割または3割が検査費用です。 >>> 今日の臨床サポート
実際には、この他に診察代やその他の費用がかかります。
骨粗鬆症の予防のために骨のことを知っておこう
ここからは、骨のことについて解説します。
骨粗鬆症の予防のためには必要な知識ですので、ぜひ読んでください。
骨は24時間365日の間、私たちの体を支える大事な役目しています。
健康な骨は、スポーツ中の怪我や事故など、よほどのことがない限り折れたりヒビが入ったりすることはありません。
でも、骨の強さは年齢とともに弱くなっていきます。また、病的な原因によって弱くなってしまうことがあります(骨粗鬆症)。
骨は一生成長し続けている
体の骨は、成長とともに長く大きくなっていきます。
骨の両端には骨成長線があり、そこから骨が作り出されていきます。そして男性は18歳前後、女性は16歳前後で骨の成長が止まります。
成長期が終わると骨の成長が止まります。それ以降、大きさや形は変わりませんが、骨自体はそのままというわけではありません。
大人になっても、常に新しい骨に置き換わっています。
作っては壊される骨の細胞
骨には、骨を壊す破骨細胞と骨を作り出す造骨細胞があります。
この二つの細胞によって、少しづつですが骨は常に壊され、そして同じ分だけ作られています。
このバランスが保たれているので、骨は常に新しくなり、丈夫なままでいられます。※骨は常に3~5%が新しく生まれ変わっているといわれています。
骨が弱くなる原因
骨が弱くなるというのは、骨の密度が少なくなりスカスカになった状態です。その原因は一つではありません。
①老化によるカルシウムの不足
骨の材料になるのは、カルシウムなどのミネラル成分です。食物で摂取したカルシウムは腸管で吸収されます。
年齢とともに腸管の機能が弱くなるとカルシウムが不足する原因となります。
②ホルモンバランスの変化によるもの
女性は閉経後に造骨細胞の働きを強くするエストロゲンの分泌が減少するため骨の密度が低下しやすくなります。
また、カルシウムを調整する副甲状腺ホルモンやカルシトニンといったホルモンが不足すると骨の破骨が進み骨の密度が低下しやすくなります。
③栄養不足によるカルシウムの不足
日本では栄養失調はあまり考えられませんが、偏った食生活や極度のダイエットなどでカルシウムが不足することがあります。
④ビタミン不足によるもの
カルシウムの吸収に必要なビタミンDが不足すると、カルシウムが不足してしまいます。
⑤ストレスによるもの
過度のストレスは腸からのカルシウムの吸収を低下させます。
⑥ステロイド剤によるもの
ステロイドは、リウマチやクローン病をはじめとする炎症性の病気の治療薬として広く使われています。
強力な消炎作用がありますが、副作用として破骨の増加と造骨の低下による骨密度の低下があります。
ステロイド性骨粗鬆症と呼ばれるほど、頻度の高い副作用です。ステロイドによる長期的な治療では、定期的な骨密度のチェックが推奨されています。
つまり、高齢者や閉経後でホルモンバランスが乱れている人、ステロイド剤を使っている人は骨密度検査の対象となります。
骨がもろくなると骨折の危険性が増していきます
骨がスカスカになってしまうと、骨折のリスクが非常に高くなります。
ちょっとつまづいて転んだだけでも、大腿骨や足首を折ってしまうことがあります。
特に問題になるのは高齢者です。骨折をしてしまうと治療中は動けません。
ずっと寝ているとそれがきっかけで寝たきりになってしまうことがあります。また運動をしなくなると、体の免疫機能も低下して風邪や肺炎にもかかりやすくなります。
できるだけ早く骨の状態を知って、治療や対策を始めることが大切です。
気になる方は、近くの整形外科や総合病院の受診をおすすめします。