【MRI基礎知識】静磁場による巨視的磁気モーメントと縦磁化発生の仕組みでは、プロトンが持つ磁気モーメントが静磁場によって「縦磁化」に変わることを解説しました。
これでMR信号を取得するための電磁誘導に必要な「磁力(磁石)」を得ることができました。
しかし、電磁誘導には「磁界の変化」が必要です。
この状態では、巨視的磁気モーメントの回転によって縦磁化(青矢印)が発生していますが、変動はしていません。
縦磁化があっても、磁界が変化しなければコイルに電流は誘導されません。
その磁界の変化を起こすのが「RFパルス」です。
RFパルス
ラジオ波(RFパルス:Radio frequency pulse)は300KHz~300MHzの周波数帯域にある電磁波を指します。
MRIでは、このラジオ波の帯域に属する3~100MHzの電磁波が使われ、その電磁波は「RF」、「RFパルス」、「ラジオ波」などと呼ばれます。
RFパルスの役割
RFパルスの役割は、同じ周波数で回転(歳差運動)するプロトンにエネルギーを渡すことです。
また、位相を揃えたり、回転を逆向きにすることもできます。
このあたりの説明は、長くなるので別のページで解説します。
まずは、RFパルスを照射すると縦磁化がどうなるのかを中心に見ていきます。
縦磁化を真横(X-Y平面)に倒す90°パルスを照射したときを例に挙げてみます。
静磁場によって縦磁化が発生したプロトンは、歳差運動をしています。
巨視的磁化ベクトル(赤矢印)は図のように回転し、縦磁化(青矢印)は、静磁場方向を向いています。
ここからは、縦磁化(青矢印)だけを図に示していきます。実際には縦磁化(青矢印)のまわりは磁化ベクトル(赤矢印)が回転していると考えてください。
ここにRFパルスが照射されると・・・
縦磁化は歳差運動をしながら、X-Y平面に倒されていきます。そのため、図のように、らせん状に回転しながら倒れていきます。
この時、倒されたことによってX-Y平面方向に巨視的磁化ベクトルができます。
これを「横磁化」といいます。
横磁化によってMR信号が取得できる
この時、X-Y成分(横磁化)は増えていき、Z成分(縦磁化)は低下していきます。
①横磁化は増加して、X-Y平面上では最大
②縦磁化は減少して、X-Y平面上では最小
実際には、XY平面に倒されるのは一瞬の出来事です。
縦磁化は外から見るとらせん運動をしながら倒れていきますが、わかりやすいように下図のような回転座標系で説明されることが多いです。
実験室系で表すとX-Y平面上で横磁化は下図のように回転をしています。
この時、近くにコイルと配置することで、回転による磁界の変化を検出することができます。
X-Y平面上で回転していると仮定した場合、ある点(コイル)から見ると磁化ベクトルは近づいたり離れたりを繰り返します。磁界の変化する方向で誘導される電流の向きも変わるので、右図のように電流が誘導されます。
これが、MRIでの信号取得の基本原理になります。
横磁化成分を作り出し、電磁誘導の原理を利用することで、MR信号を取得することができます。
【関連記事】【MRIの基礎原理】電磁誘導を利用したMR信号の取得のしくみ
まとめ
RFパルスによって横磁化ができる仕組みを解説しました。
この横磁化によってMRI信号を検出できるようになります。
次回は、横磁化だけでなく縦磁化を検出する仕組みを解説します。